11月13日に虎ノ門ヒルズ ステーションアトリウムで開催された、158回目のHills Breakfast。来場者のおよそ半分が初めての参加というフレッシュな雰囲気の中、4人の個性的な登壇者たちがそれぞれの想いをプレゼンしました。
■五味亮将(Ryosuke Gomi)/プロパデルプレーヤー
【profile】
ヨーロッパ・南米発祥、アジア圏でも急成長中、”パデル”のプロアスリート。「日本のパデルから、日本へさらに元気と活力を!」を掲げ、その第一歩としてアジア人前人未到の「世界150位達成」を目指す。本場バルセロナでの修行を終え、東南アジア・ヨーロッパでの国際大会転戦予定。
メキシコ発祥で、競技人口3000万人のスポーツ「パデル」
「“パデルのごみちゃん”と呼ばれています」と、アスリートらしく爽やかな挨拶でプレゼンがスタート。五味さんは、「パデル」というメキシコ発祥のスポーツで、プロ選手として活躍しています。パデルは、壁に囲まれた専用のコートでネットをはさんで、ラケットでボールを打ち合う競技。壁のバウンドを利用してプレーすることができ、テニスとスカッシュの両方の要素をもったスポーツと言われています。
五味さんいわく、「2対2のペアで戦うので、ラリー中にペアとのコミュニケーションが大切」とのこと。壁に当てるのか、すぐさま相手コートに返すのか……。一瞬の判断をチームメイトと共に繰り返し、試合を展開します。スペインでは、人口のおよそ10%がプレーしている人気スポーツなのだとか。世界では約3000万人の競技人口がいるそうです。
世界150位を目指し、奮闘中! パデルの魅力を広く伝えたい
日本ではパデルの競技人口はおよそ4.5万人で、まだまだマイナー。そんな中で、五味さんは自身の「もっとパデルの魅力を知ってほしい!」と精力的に活動しています。その一歩として掲げているのは、アジア人前人未到の「世界150位達成」を目指すこと。自身が世界で勝つことが、日本でのパデルの認知度や人気向上につながると考えているのです。
その先に見据えているのは、パデルを通じた社会貢献です。コートは広すぎず狭すぎず、ラケットも短くて扱いやすい。老若男女問わずに楽しめるスポーツだからこそ、多くの人に元気と活力をもたらすポテンシャルが高いのが、パデルの魅力です。心身の健康の向上、さらには企業の組織課題の解決にも寄与できる可能性があると、五味さんは話します。パデルが気になる人は近くにプレーできる場所があるか、ぜひチェックしてみて。
■小林こず恵(Kozue Kobayashi)/一般社団法人日本遺産普及協会 代表理事
【profile】
2021年、文化庁が認定する「日本遺産」に出会い、その世界観に魅了され、各地の日本遺産をめぐり始める。2023 年、仲間と共に一般社団法人日本遺産普及協会を設立。現在は、日本遺産の関係人口を増やすべく、「日本遺産検定」の開催、「日本遺産ソムリエ」の輩出・活動支援等に力を入れている。
文化や歴史、名産などを軸に、地域活性化を目指す「日本遺産」認定
日本遺産とは、文化庁が各地域の文化や伝統、食などの魅力をストーリーとして語り、地域の活性化や観光振興につなげる取り組みを支援するために設けた、独自の認定制度です。現在、全国に104件の日本遺産が存在しているのだとか。
ある2021年にとある勉強会で日本遺産に出会った小林さんは、「日本人らしい思想のルーツがつまっていると感じ、広く日本人に知ってもらいたい」と、仲間と共に一般社団法人日本遺産普及協会を立ち上げました。協会では、「日本遺産検定」の実施や、オンラインで学べる「日本遺産カレッジ」の運営、各地の日本遺産に関するイベントなどを紹介する「日本遺産マガジン」の発行、投票で注目の日本遺産を決定する「日本遺産アワード」の実施などを通して、広く日本遺産を広める活動をしています。
各県に1つはある日本遺産。身近なところから足を運んでみよう
日本遺産は47都道府県に1つ以上あり、「出張ついでに楽しめる地域のエンタテインメントです」と小林さん。そして、関西への出張の際に訪れたい日本遺産を3つ紹介してくれました。1つ目は、奈良県の吉野地域。独自の造林技術で美しい「吉野材」が生み出されていて、全国各地のサウナにここの木材が使われているのだとか。2つ目は、赤穂浪士で有名な兵庫県赤穂市。長く製塩技術が磨かれ、赤穂の塩はブランドになっているのだそう。3つ目は神戸市。400年の伝統を誇る清酒が造られているといいます。
国は2030年のインバウンド目標人数を6000万人と掲げていますが、観光人材が足りないことが課題です。「日本遺産を通して、日本遺産ソムリエが活躍できる場を増やしたい」と小林さん。住んでいる地域や地元にどんな日本遺産があるのか、身近なところから足を運んでみてはいかがでしょうか。
■佐藤靖晟(Nobuaki Sato)/Lei ブランドマネージャー
【profile】
神奈川県出身。ポリグロット。高校卒業後、イタリア・スペインへ渡りサッカー選手として活動。帰国後は、海外経験と語学力を活かし多国籍企業の海外進出/プロジェクト支援に携わる。現在はライフスタイルブランド『Lei』のブランドマネージャーとして、ブランドを世界へ発信している。
プロサッカー選手から、ブランドマネージャーへ転身!
佐藤さんがブランドマネージャーを務める「Lei」は、光と影、特に影の美しさを表現するプロダクトを展開するブランドです。電源を一切使わず、ロウソクの熱源だけで風をつくって香りを運ぶアロマディフューザーや、反射光を使用した斬新な設計が魅力の、照明とアロマディフューザーが一体となったミラーなどを国内外に届けています。
実は、佐藤さんは少年時代からサッカーひと筋で、イタリアやスペインなど海外で活躍していた元プロサッカー選手。畑違いの世界から現在の仕事へたどり着いた背景には、壮絶な出来事がありました。それは、海外でチームの移籍をしようとしていた時の代理人が、なんと詐欺師だったこと。巻き込まれた佐藤さんは、ホテルに監禁される経験をしたそうです。
海外との関わりが長いからこそ見出せた、日本の素晴らしさ
その後、ハンガリーへ逃亡するも、「お金がなく、わざと高いレストランで食事をして隣の人におごってもらう」といった苦労を重ね、サッカーができる環境を探しました。しかし、プレイヤーとしての契約が叶わず、帰国を余儀なくされます。その後は、海外でのサッカー経験で身につけた6か国語の言語能力を生かし、プロサッカー選手の通訳、海外企業の日本進出の支援などで活躍。
このように海外の人を日本に招く仕事に携わる中で再認識したのが、日本の素晴らしさでした。海外へもっと日本の良さを伝えたい。そう考えていた時に出会ったのが、Leiで扱っているプロダクトだったのです。光よりも影にフィーチャーする趣の深さこそ、日本人の美意識。今月、渋谷に店舗をオープンすることが決まっているのだそう。唯一無二の美しさを体験したい人は、お店へ足を運んでみては。
■柴田雪菜(Yukina Shibata)/DAMBO.LLC CEO
【profile】
7歳男児の母。育児がきっかけとなり、環境と教育を軸に未来への取り組みをおこなう「DAMBO」を立ち上げる。「子どもたちへの想いを、未来へつなげる」をコンセプトに、再生素材であるダンボールを用いて、絶滅危惧種をモチーフにしたプロダクトや、親子で環境をまなぶワークショップをプロデュースしている。
身近にあるサステナブル素材、ダンボールで作るプロダクト
30歳で結婚し、出産。現在、7歳の子どもがいる柴田さんは、「子どもを持って初めて未来について考えた」と話します。余裕がなく、消費をするばかりだった子育て中に、「子どものために、想いが未来につながるシステムを作りたい」と、会社を立ち上げたのです。手掛けているのは、ダンボールを素材に用いた子どもの用のおもちゃやインテリア、企業向けの什器など。
ダンボールはリサイクル率95%を超え、CO2の排出も少ない環境負荷の低い優れた資材です。ダンボールは紙なので、水だけで繊維状に戻るのが特徴。そのため、リサイクル工程の環境負荷が低いサステナブルな素材なのです。3000人以上のママ声をデザインに落とし込んだ、おしゃれでかわいいキッズハウスなど、これが本当にダンボール製なの?と驚くような素敵なプロダクトばかりです。
おもちゃやインテリアを通じて、環境について楽しく学べる
また、ジンベイザメやサイなど、絶滅危惧種をモチーフにしたプロダクトが多いのも特徴。遊びながら、普段使いしながら、自然と環境について知ることができる、そんなアイテムなのです。こうした姿勢は多くの企業の共感を呼び、ステラマッカートニーやロンハーマンといった海外のアパレルブランドや、伊勢丹や高島屋といった百貨店などから声が掛かり、ポップアップイベントなどを開催しているのだそう。
ポップアップイベントでは、絶滅危惧種などの研究をしている大学の先生などと一緒に、楽しく学べるワークショップを実施。未来のためには、「作り手はもちろん、使い手の成長が大切だと思う。子どもたちも私たち大人も成長しなければならない」と柴田さん。たかがダンボール、されどダンボール。私たちの身近にある素材が持つ可能性の高さを、柴田さんの活動は教えてくれます。
■クロストーク
プレゼンの後は、登壇者4名+MCが自由に語り合うクロストークの時間。アーカイブには残されないトークの様子を、ちょっとだけお届けします。
五味さんから小林さんへ「イチオシの日本遺産を聞いてみたい」との質問が。これに対して「立場上、言いづらいけれど…」と前置きしつつ、「行きやすいところから行ってみるのがオススメ」と、東京近郊のエリアで2カ所、レコメンドしてくれました。
「1つは、八王子市。かつて養蚕農家や絹商人が集まった歴史を持ち、絹産業の街として知られています。“生命の力”に満ちた高尾山も有名です。江戸の街並みを残した成田、佐倉、佐原、銚子の北総4都市もぜひ」
柴田さんから佐藤さんへは、「日本のプロダクトがもつ美しさとは何か?」との質問が。佐藤さんは、「ひと言で表現するのが難しいけれど、西洋は光に注目したり、派手な装飾をしたりすることが多いが、影や影の揺らぎが日本らしい美しさ」と答えました。
登壇者同士、互いの活動に共感してつながりが築かれるのも、Hills Breafastの魅力です。
■参加者コメント
ここで、会場に足を運んだ参加者の声をお届けします。
◎六本木ヒルズで開催していた時に数回足を運んでいましたが、久しぶりの参加です。4人の登壇者それぞれのプレゼンがどれも印象的で、感想をどれか1つに絞るのは難しいですね。Hills Breafastは気軽に参加でき、朝の短い時間で内容の濃い話を聞けるのがいいところだと思います。普段触れ合わないジャンルの話を聞けて、とても刺激になります。
(30代・会社員)
◎私自身が日本遺産検定を受けたことがあり、小林さんの話を聞きたくて初めて参加しました。会議室のような場所でやっているのかと思ったら、オープンなスペースで驚きました。通りすがりの通勤途中の人も耳を傾けているのを見て、こういった偶発的な出会いが生まれるのはとてもいいことだなと思いました。
(30代・会社員)
◎2回目の参加です。前回参加して、Hills Breafastの箱推しになりました。今回は登壇者の皆さん全員に、日本らしさや「和」の心を持って活動している共通点を感じましたね。日本人って謙遜したり自分を小さく見せたりする傾向があると思いますが、各人が堂々と前に出て活動していて、素敵です。Hills Breafastは、登壇者の話を聞けるのはもちろん、参加者同士で感想をシェアできたり、登壇者と直接話ができたりするのがいいですね。
(40代・自営業)
12月は開催をお休みし、次回は、年明け1月27日(火)朝8時より虎ノ門ヒルズステーションアトリウムにて開催します。登壇者のプロフィールや申し込み方法などはこちらから。