153回目のHills Breafastは、5月29日に虎ノ門ヒルズ ステーションアトリウムで開催されました。15歳という史上最年少の登壇者も含め、4名がそれぞれの人生や想いをプレゼンしました。
現場で話を聞けなかった!という人は、それぞれのプレゼンをこちらの動画でチェックしてくださいね。
■工藤 淳也(Junya Kudo)/丸善ジュンク堂書店・執行役員
【profile】
1989年兵庫県芦屋市生まれ。大学在学中に株式会社HONを設立。ネットで在庫開示や取置・取寄サービス等当時OtoO(off-line to on-line)と呼ばれるサービスの展開等を実施。現在は丸善ジュンク堂書店執行役員として、デジタル事業担当役員および新規事業を担う企画
事業開発部部長を務める。
課題が山積する書店業界。どうやって生き残るか?
父親がジュンク堂の創業者で、幼い頃から身近に書店があったという工藤さん。現在は丸善ジュンク堂書店で執行役員を務めており、今年の4月に新ブランドとして、虎ノ門ヒルズに「magmabooks」をオープンしました。なぜ、丸善でもジュンク堂でもない新たなブランドを立ち上げたのか。そこには、書店が抱える課題感がありました。
1日に200~300冊もの本が世に出ていて、少量多品種を展開する事業であること。利益率が低いこと、消費者が可処分時間を割くコンテンツが増え、読書をする人が減っていること。こうした課題から書店は窮地に立たされており、文具や雑貨を売ったり、ブックカフェを展開したりと、生き残りをかけたさまざまな工夫をこらしているのです。
”本との出会いのきっかけ“を生み出す、新ブランドを発足
しかし、やはり本を売ることで、書店も含めた出版業界を存続させていきたい。そうした想いから、「magmabooks」は誕生しました。「チョコレートはなぜ人を魅了しつづけるのか?」「私達はなぜ、生き延びようとするのだろう?」といった問いがしおりに書いてあり、裏を見るとおすすめの書籍が紹介されている。そんな“問いから本に出会う”体験や、本の種類ではなくテーマで編集した書棚を設けるといった仕掛けが散りばめられています。
店舗のコンセプトは、「知は熱いうちに打て」。「magumabooks」が、これからの書店のあり方を模索し、牽引していく存在になる日は近そうです。ぜひ新しい“本との出会い”を体験しに、虎ノ門ヒルズへ足を運んでみてください。
■楠瀬 正紘(Masahiro Kusunose)/隊長・うちゅうブルーイング共同創業者・醸造責任者
【profile】
ウェブデザイナー、自然栽培農家としてのキャリアを経て、2018年よりクラフトビールの世界へ。IPAやフルーツをふんだんに使ったスムージービールなど300種以上を開発。独創的なレシピと高い品質で、国内外のファンを魅了し続けている。WBA2022 IPA部門世界1位受賞。
テント生活や四国一周、自給自足。攻めた生き方を実践
うちゅうブルーイングの共同創業者・醸造責任者として、クラフトビールづくりに取り組んでいる楠瀬さん。2025年5月には、ビールのオリンピックと呼ばれる「ワールドビアカップ」で世界一を獲得しました。しかし、およそ20年前の2004年、楠瀬さんは今とは全く違う、意外な生活をスタートさせていました。「衣食住を維持するために、働かなければいけないことに疑問を抱いた」という理由で、成人式の翌日からテントで暮らし始めたのです。
その後、社会復帰したものの、鬱になるなど苦しい時期を過ごし、「自分に何かできることはないか?」と取り組んだのは、四国一周の募金活動でした。よさこいの衣装を着て、踊りながら200万円を集めて環境団体へ寄付。その時に出会った人たちとの縁で、自給自足をしようと山梨へ移住しました。
発酵、そしてクラフトビールとの出会いが人生を変えた
田んぼ仕事などをするうち、興味を持ったのが土でした。肥料を使わず、自然農法で稲を育てる鍵になるのが、土の中で起きている「発酵」です。その興味は漬物や味噌づくりへと発展。そして、ものづくりの見せ方を学ぶべく訪れたアメリカで出会ったのが、クラフトビールでした。「味、香りの多様さに衝撃を受けた」と楠瀬さん。醸造所を手作りして、クラフトビールづくりを始めました。
クラフトビールづくりの達人たちに学び、「3歩進んで2.99歩下がる」を実践。進んでないように見えても、経験による学びが加わって0.01歩進んでいるのです。楠瀬さんが最後に参加者たちへ伝えたのは、「攻めて生きてこ なんとかなるから」との言葉。言葉通りの人生を歩む楠瀬さんの姿に、勇気をもらった参加者は多かったはずです。
■相馬 世世歌(Yoyoka Soma)/ドラマー
【profile】
8歳で世界的に話題となり、米TV番組The Ellen Show出演。「世界が尊敬する日本人100」「世界TOP500ドラマー」最年少選出。シンディー・ローパー、Char、奥田民生、MIYAVIらと共演。2022年アメリカ移住。昨年アルバム「For Teen」発表。
1歳半でドラムに触れ、15歳にして世界的に活躍中!
現在LA在住の15歳のドラマー、YOYOKAさん。一時帰国中のタイミングでHillsBreakfastへ登壇してくださいました。北海道石狩市に生まれ、音楽好きの両親の影響でドラムに興味を持ち始って演奏を始めたのは、なんと1歳半頃。「日本語を覚えるよりも先にドラムを始めたので、第一言語が音楽という感覚」と話します。その才能はどんどん伸びていき、8歳の時に投稿した演奏動画が、レッドツェッペリンのロバート・ブラントやレッチリのチャド・スミスなど世界的ミュージシャンの目に留まり、一躍話題に。
ビルボードなどでも特集され。9歳でアメリカのTV番組The Ellen Showに出演。さらには、Newsweekの「世界が尊敬する日本人100人」に史上最年少で選出されました。その後は、シンディー・ローパーや東京スカパラダイスオーケストラなど国内外の多くのアーティストとの共演を果たしています。
若くても世界へ挑戦できる!先駆者として道を切り開く
2020年、コロナ禍で国内外のスケジュールがキャンセルになり、立ち止まって考えたのは、「世界中の才能が集まるアメリカへ、なるべく若いうちに移住して音楽活動をしたい」との目標。しかし、その実現には資金が必要です。奨学金などを調べても、ほとんどが対象は18歳以上、ジャンルはクラシックのみ、なおかつ学費の援助のみ。そこでクラウドファンディングをして支援を募り、2022年に12歳で家族と共に渡米を果たしました。
渡米後も苦労が絶えませんでしたが、それ以上に多くのミュージシャンらとの出会いが糧になりました。昨年は、オリジナルアルバム「For Teen」を発売。世界へ挑戦しようとした際、「まだ早い」といった声も届いたといいますが、若いうちに挑戦することに意味があることを証明したのです。「未来の挑戦者のために、少しでも道を切り開きたい」。YOYOKAさんは、15歳の若さで次世代へのバトンをつなごうとしています。
■小宮山 利恵子(Rieko Komiyama)/株式会社リクルート スタディサプリ教育AI研究所所
長、東京学芸大学大学院教育学研究科教授
【profile】
1977年東京生まれ。衆議院、ベネッセ等を経て2015年よりリクルートにて現職。ICT教育、アントレ教育が専門。ここ数年は五感を使った学びにも注力。「鮨銀座おのでら 鮨アカデミー」修了。新刊『好奇心でゼロからイチを生み出す「なぜ?どうして?」の伸ばし方』が5月23日に発売。
これまでの教育が通用しない世の中に。探求学習の重要性
教育とITC、アントレプレナーを専門とする小宮山さん。「1人1台小中学生にPCが配られていて、活用も8割ほど。コロナ前とは雲泥の差です」と、教育現場の現状を語ります。こうしたテクノロジーは、1つの正解を早く確実に解く「ドリル型」の日本の学校教育と相性が良いものの、不安定なこれからの時代を生きる子どもたちには、別の教育が必要だといいます。それは、「失敗の多い、一見無駄に見えるような探求学習」。その1つがアントレプレナーシップなのです。
リクルートが展開する『高校生Ring』では、アントレプレナーシップを「急激な社会環境の変化を受容し、新たな価値を生みだしていく力」「自ら問いを立てて行動し、変化を起こす力」と定義しています。文科省も、アントレプレナーシップ教育を全国に拡大するための施策を推進しており、「これからさらに注目されていくのではないか」とのこと。
人間にしかできないことを追求し、自分を磨いていくことが大切
アントレプレナーシップ教育が必要な背景には、日本の国際競争力の低下、雇用形態の変化(終身雇用や年功序列の見直し)、不確実な時代への対応といった課題があります。今後、ホワイトカラーの仕事の多くがAIに代替されることが予想されており、「だからこそ、人間にしかできない、クリエイティブな問いを立てる力が重要なのです」と説明します。
AIにはない人間らしさを追求して、小宮山さんが取り組んでいるのは、キャンプやレーシングカー、ダイビングや釣り、利き酒といった五感を使うアクティビティ。昨今、世界的にも「五感」や「アナログ」がトレンドになっているのだとか。先日、人間にしかできない創造的な問いをたてる力をどう育んでいくかをテーマに、自著を出版。これからの時代に必要な力を子どもにどう付けさせればいいか。気になる人は書店へどうぞ。
■参加者コメント
ここで、会場に足を運んだ参加者の声をお届けします。
◎4人ともそれぞれのフィールドで挑戦と活躍をしている人たち。皆さんが持っているティップスを教えていただくことができて、ためになりました。個々にバックグラウンドは違いますが、自身の生活に生かしていけるような生き方のコツがつかめた気がします。今日聞いた話を、まるで自分が考えたことかのように職場で人に話したいと思います(笑)。
(30代・会社員)
◎初めて参加しましたが、久々に人の話を聞いて心が躍りました。皆さんの話を踏まえて、自分のこれまでを振り返り、またこれからについても考える時間になったと思います。
やってみようという前向きな気持ちになれました。経験で人は作られるのだと、あらためて感じる体験でした。
(40代・広告業)
次回の開催は、6月25日(木)8:00~。場所は虎ノ門ヒルズ ステーションアトリウムです。
登壇者のプロフィールや申し込み方法などはこちらから。