3月31日、虎ノ門ヒルズ ステーションアトリウムで151回目のHills Breafastが開催されました。集まった参加者たちは、新年度を新たな気持ちで迎える良い刺激を、登壇者の3名から受けていたようです。
現場で話を聞けなかった!という人は、それぞれのプレゼンをこちらの動画でチェックしてくださいね。
■松島靖朗(Matsushima Seiro)/安養寺住職・認定NPO法人おてらおやつクラブ代表理事【profile】
1975年奈良県生まれ。安養寺住職・認定NPO法人おてらおやつクラブ代表理事。子どもの貧困問題解決のため、支援団体や公的機関と協業する「おてらおやつクラブ」を全国展開。2020年11月認定NPO法人化。2018年度グッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)受賞。
お寺に集まるお菓子を、貧困家庭に「おすそわけ」
子どもの9人に1人。ひとり親世帯に限ると子どもの2人に1人が貧困状態にあるといいます。「これは、遠い国の話ではありません。日本の実情です」と松島さん。「貧困」の「貧」は経済的に困窮していること、「困」は困りごとがあっても相談できずに孤立していることを意味します。助けを求めることの心理的な障壁、情報不足などが壁となり、なかなか支援につながらないのが現状です。
2013年、大阪で母子が餓死状態で発見される痛ましい事件が起きました。そのニュースを見て松島さんは、「この飽食の時代に、食べることができず尊い命が失われるなんて。二度と同じことを起こしてはいけない」とある活動を始めました。それは、お寺に集まるお供え物を困っている世帯におすそわけする「おてらおやつクラブ」という活動です。
活動をDX化。よりスムーズに多くの支援ができる環境に
もともとお寺には「おそなえ、おさがり、おすそわけ」の文化があり、それを社会課題と結び付けた松島さん。2011年にはNPO法人化して活動を拡大してきました。しかし、コロナ禍でさらに多くの家庭が貧困に陥り、活動はパンク状態に。そこで取り入れたのはDXでした。
個人情報を守りながらも、より多くの寺からおやつを送れないか。そう考えてLINEを窓口にし、メルカリの匿名送付の仕組みを利用することにしたのです。ある時、支援している子どもから「お坊さんへ。和菓子はもういいので、ポテトチップスを送ってください」との手紙を受け取ります。「子どもがようやく、子どもらしいわがままを言えるようになった証拠」と松島さん。活動は寄付によって成り立っています。誰にでもできる社会支援。気になった人はぜひ「おてらおやつクラブ」で検索を。
■尾形哲平(Teppei Ogata)/東日本電信電話株式会社 ビジネスイノベーション本部 ソリューションアーキテクト部 エグゼクティブコンサルタント・スリープテック事業チーム リーダー
【profile】
NTT東日本でスリープテック事業を立ち上げ、191社が参画する日本最大の睡眠コミュニティ「ZAKONE」のディレクターとして事業をリード。一方で、英国老舗ブランドのビンテージ革靴店「JUST LIKE HERE」と山形の肉そば屋を経営し、領域を越えた新たな価値創造に挑戦中。
本業+2つの副業。領域の異なる3足の草鞋を履く
NTT東日本で働きながら、ビンテージ革靴店と肉そば屋を経営するという、およそ結びつきのない3つの分野で3足の草鞋を履いている尾形さん。「副業を始めたからこそ、見えたものがある」と語ります。副業のきっかけは、自身が履いていたビンテージの靴が購入した価格よりも高く売れた経験でした。価値の下がらないビンテージの魅力を感じ、自身でメンテナンスをして売るビジネスを始めたのです。
30歳を過ぎ、「故郷・山形の味を東京で広めたい」と考えてオープンしたのは、山形名物「肉そば」とお酒を楽しめる隠れ家的な居酒屋です。もちろん、飲食店の経営は初めて。「飲食業の大変さがよくわかりました」と尾形さん。スタッフを抱える責任も大きく、「自分の苦手なところと向き合いながらやっています」と語ります。
完璧でなくていい。失敗しても一歩を踏み出すことが大切
本業と副業はバラバラの3ジャンルですが、共通しているのは、尾形さん自身が好きなことであるということ。「想いが乗っかると頑張れる」。それが3足の草鞋を可能にしている原動力です。「よくそれぞれで切り替えができるよね」と言われるそうですが、本人としては切り替えているつもりはなく、「3つをいったりきたりしながら思考が深まっている感覚がある。仕事というより自分で人生を動かしている感覚」とのこと。
やってみたいことがあっても、二の足を踏む人が多い中、「大事なのは完璧な準備ではなく、まず一歩踏み出してみること。失敗してもそこから得る学びがある」と尾形さん。「やってみたいと思った瞬間に、もう1歩目を踏み出しているくらいがいい」との言葉に、会場に集まった参加者たちはきっと、背中を押されたはずです。
■黒田剛(Gou Kuroda)/非効率家・書籍PR・株式会社QUESTO代表【profile】
書店勤務を経て講談社でPRを担当し、2017年独立。『妻のトリセツ』シリーズ70万部、『続 窓ぎわのトットちゃん』50万部、『葉っぱ切り絵』シリーズ30万部など多数のPRを手がける。独自の非効率仕事術をセミナー他で発信。初著者『非効率思考』(講談社)が4月10日発売。
効率の悪さがヒット作連発の秘訣?「非効率」をウリに
気になるのは、黒田さんの「非効率家」という見たことのない肩書き。「非効率なのになぜかうまくいく仕事のやり方について話します」と、プレゼンが始まりました。黒田さんは、書店や出版社勤務を経て自身の会社を興し、書籍のPRを生業としています。『妻のトリセツ』シリーズや『続 窓ぎわのトットちゃん』など、ヒット作も多数。書籍が売れない時代と言われて久しい中、ヒット作を生み出す背景には、黒田さんならではのメソッドがあるのです。
それが、非効率に動くこと。ある編集者に本が売れる秘訣を聞かれ、答えたインタビューがnoteで話題に。寄せられた感想で多かったのが、「効率悪いことが結局いちばん、効率がいいんですね」との声だったそう。「自分では効率が悪いとは思っていなかったけれど、そう見えるんだとわかた」と黒田さん。
人の心に何かを届けるには、非効率がちょうどいい
ここでいう非効率とは、決してゆっくり仕事をするとか、わざと遠回りなことをするといった意味ではなく、「人の心を動かすこと」を優先することを指します。そのために黒田さんが心がけているのは、「やってみたの法則」です。とにかく誰かに勧められたことを素直に受け取って、やってみて、感想を伝える。東京マラソンを走ってみたり、ダイエットをしてダイエット本に登場してみたり、バレンタインデーに奥さまへ花を贈ったり。
「やれることは全部やる。やってみて、うまくいったことをさらにやる」。それが黒田さんのモットーです。そこから生まれる人とのつながりや信頼感、偶然などが全て財産となって、仕事につながっていくといいます。黒田さんの非効率メソッドを詳しく知りたい人は、4月10日に発売される初の自著『非効率思考』を手に取ってみて。
■クロストーク
プレゼンの後は、登壇者3名+MCが自由に語り合うクロストークの時間。アーカイブには残されないトークの様子を、ちょっとだけお届けします。
会場から「みなさん自身の長所を生かして活躍しているが、好きと得意がマッチしてきた瞬間があるか? 好きだけではなかなか成功しないと思う」との質問が。これに対して、「私はむしろ、私らしさをいかに手放せるかを考えて活動している」と松島さん。寄付や支援活動は、より多くの人が参加できるように誰にでもできる汎用性を持たせることが大切だからです。
一方で、「やり始めてみたら見つかった。ちょっと興味があったら行動してみることが大切」と尾形さん。「好きなことだけやっていたら、周囲に迷惑がかかるけれど、得意なこと苦手なことをみんなで補い合えばいい。好きなことをするのが、これからの時代にいちばん大切なこと。まわりに頼りまくっていい」と黒田さん。
それぞれが異なる価値観を持ちながらも、3人共が誰かの心を温かくする活動をしているのが印象的に感じるクロストークになりました。
■参加者コメント
ここで、会場に足を運んだ参加者の声をお届けします。
◎SNSで知り合いが「朝活になるし、すごくいいエネルギーをもらえるイベント」と紹介していて、興味を持って参加しました。黒田さんが話していた「やってみたの法則」の話が面白かったですね。地方から出てきているが、東京の人はコスパ、タイパに追われていると思う。非効率でもやってみるのはいいなと思いました。今日のHBFを振り返って、少し自分と向き合う時間を過ごしてから出勤したいです。
(20代/出版業)
◎ヒルズアプリで知り、スピーカーの皆さんのプロフィールがおもしろそうなので、初めて参加しました。非営利で活動しているお坊さんと商業的な世界で活躍している2人の組み合わせが絶妙でした。松島さんは「誰でもできること」を目指して活動していて、尾形さんと黒田さんは「自分にできること」をやっている。その価値観の違い、大切にしているコンセプトが違って、バランス的にとても良かったと思います。
(40代/戦略コンサルタント)
◎友人に誘われて初めて参加しました。三者三様のバラエティーに富んだ話でどれもおもしろかったですね。登壇者はもちろん、集まってくる参加者もポジティブなエネルギーのある人たちばかり。普段この時間帯はまだ活動をしていないけれど、朝早く起きて良かったと思いました。
(30代、映像ディレクター)
次回の開催は、4月24日(月)8:00~。場所は虎ノ門ヒルズ ステーションアトリウムです。登壇者のプロフィールや申し込み方法などはこちらから。