10月の開催レポートが到着!プレゼン動画公開中!

10月16日に行われた147回目のHills Breakfastは、多くの初参加者を迎えて幕を開けました。虎ノ門ヒルズ駅の出口からすぐの会場ともあって、通勤や通学で行き交う人たちも興味津々の様子。オープンスペースならではのにぎやかさも相まって、熱気あふれる回となりました。

現場で話を聞けなかった!という人は、それぞれのプレゼンをこちらの動画でチェックしてください。

■たんくん(Tankun)/令和のでんじろう先生?/マルチに活動する実験系Youtuber

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【profile】
京大院卒後、ワタナベエンターテインメントを経て現在フリーで活動している実験系YouTuber。マルチに活動を行っており、趣味で行っていた株式投資で変な才能が開花してしまい少し話題になっている。モットーは「YouTubeの活動費用は株で稼ぐ」としている。

実験系Youtuberの課題は、実験にお金がかかること

大きな鏡の前でマッチの束が炎をあげている写真から、プレゼンがスタート。太陽の光を集めてマッチに火を点ける実験の様子です。たんくんは、化学タレントとして芸能活動をした後、現在は実験系Youtuberとして、さまざまな実験動画をアップして化学のおもしろさを多くの人に伝えています。「突然ですが、雲を作る実験をします」と、おもむろにペットボトルを出すと、手早くペットボトルの中に白い雲を発生させました。これには、会場に集まった参加者たちもびっくり。

これは身近にあるものでできる実験ですが、例えば巨大虫眼鏡を作って実施する実験では、製作に20万円もの費用がかかり、壮大な実験をしようと思えば思うほど、お金がかかる現実があるといいます。

値上がり株を当て、株式投資で実験費用を稼ぐ日々

そこで、たんくんが始めたのが株式投資。投資で儲けたお金を、実験費用に充てているのです。「ガラッと話が変わるので、ついてきてください」と断りつつ、投資での成功体験とそのコツを話し始めます。

以前、三井E&Sという会社がアメリカのホワイトハウスのホームページに載っていることに気づいて、すぐに株を買ったとのこと。結局、その株は6倍以上の値に跳ね上がり、その情報をSNSで拡散すると、日本で最初に三井E&Sの株に目を付けた人として、有名になったのです。その後、決算資料や決算説明会動画を見たり、SNSやラジオで情報収集したりと徹底的にリサーチを重ね、値が上がる株を次々に当ててきました。実験費を十分に稼げるようになったたんくんの、今後の実験内容が楽しみです。

■西村 佑美(Yumi Nishimura)/発達専門小児科医/一般社団法人 日本小児発達子育て支援協会 代表理事/日本大学医学部附属板橋病院小児科研究医員

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【profile】
発達専門小児科医、三児の母。重度自閉症きょうだい児として育った経験から医師の道へ。大学病院勤務を経てママ友ドクター®プロジェクト始動。SNSやオンライン子育て支援を経て、一般社団法人日本小児発達子育て支援協会設立。著書「発達特性に悩んだらはじめに読む本(Gakken)」

日本とアメリカでは、発達障害への認識が全く違う

「発達障害の子どもにどんなイメージありますか?」と、参加者に問いかけて始まった西村さんのプレゼン。実は日本で「発達障害」と呼ばれている特性は、英語では「Developmental Disorder」で、「発達の順番が違う」という意味。アメリカなどでは、障がいではなく多様な個性だと理解されていますが、日本ではどうしても障がいのイメージがつきまとい、かわいそう、治らない、将来苦労するなど、良くない印象が抱かれてしまっています。

また、1943年にアメリカの医師が、「子どもが自閉症になるのは、冷蔵庫のように冷たいお母さんのせい」と伝えたことも、そうした子どもを持つ母親たちを苦しめたのです。西村さん自身も、姉が自閉症で、母親は辛い思いをしてきたのだといいます。

ママ友ドクターとして、悩むママたちを支えたい

また、西村さんの息子にも言葉の遅れや発達特性があり、発達専門の医師でありながらも1人の親として悩んだとのこと。それでも、近年では早い段階で適切に介入すれば、能力が伸びることがわかっていて、「発達にでこぼこがあっても、あきらめなくていい」と話します。

ある時、診療をする中で余命宣告を受けているママと出会いましたが、医師という立場から個人的に手を差し伸べるのが難しいという現実に直面します。そこで西村さんが始めたのが、「ママ友ドクター」という活動。オンラインを中心に、子どもの発達の悩みを抱えるママたちと向き合っています。現在は全国にできたネットワークを活用し、ママ同士が支え合う仕組みをビジネス化して、邁進中。「発達特性のある子どもへの見方を変えてほしい」。西村さんの挑戦は続きます。

■石田 康平(Kohei Ishida)/極楽浄土とVRを繋げる建築クリエイター

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【profile】
研究者でクリエイター。博士(工学)。東京大学大学院卒。大阪府出身。建築や都市とVR・MRの関係を探求している。主な作品に東京都現代美術館の企画展で展示された「歴史におけるVR的なもの」や、「能面をつけて暮らす集合住宅」などがある。受賞に新建築コンペ最優秀賞ほか。

極楽浄土や茶室は、いにしえから続くVR的な世界

建築や都市とVR・MRの関係について研究を続けている石田さん。建築設計の中でVR、MRをどう使うかを考えてきましたが、VRやMRの技術は数年で変わっていくもの。一方で建築は、何十年もの長い単位で考えていくもの。そのため、論文を書いても技術が変わったら、すぐに古くなってしまうという壁がありました。そこで石田さんは、VR、MRと建築をもっと本質的に考えたいと思ったといいます。

思案して行き至ったのは、「歴史の中でVR的な事例があるのではないか」との発想でした。と思った。例えば、昔から人々が死後の世界として思い描いてきた「極楽浄土」は、別世界をつくってそこに入ってみるという意味で、VR的な世界観です。「茶室」も本質は「市中の山居」であり、別世界として作られています。

バーチャルとは何なのか?を問いかける

極楽浄土や茶室などに展開されてきた、もう1つのリアリティが発展して、今のVRにつながっているのではないか。そうしたテーマで論文を発表したり、東京都現代美術館で展示を行ったりと、活動の幅を広げています。その1つが、「Virtual Renovation」という試みです。実際には存在しない壁がMRグラスをかけると見え、それを建築の一部として考えていいのではないかと問いかける作品です。バーチャルだからこそ、さまざまな発想で自由にリノベーションができる。そんな魅力があるといいます。

「そこに幽霊がいたときに、それはバーチャルなのか、リアルなのか?」。プレゼン後のMCとの対話で石田さんが語ったこの問いに、会場に集まった参加者たちは思い思いに考えをめぐらせました。技術の発達でバーチャルとリアルの境が曖昧になりつつある今、1人1人がバーチャルとは何か?を考える必要があるかもしれません。

■伊藤 仁美(Hitomi Ito)/着物家/株式会社enso代表

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【profile】
「日本の美意識と未来へ」を掲げ『enso』主宰。祇園の禅寺に生まれ、和の空間に囲まれて育つ。講演やメディア連載、国内外の企業やブランド、アーティストとのコラボレーションや監修多数。着物の可能性を追求し続けるオリジナルブランド「ensowabi」ディレクター。

着物と出会って、自分探しの旅が終わった

京都にある両足院という由緒ある寺に生まれた、伊藤さん。美しい庭園や建物、数多く芸術品など、静寂の和の空間の中で育ってきました。しかし、だからこそ、「両足院の娘」である以外に自分には何があるのだろう。何者かになりたいけれど、それが見つからない。そんな日々を過ごしていたといいます。

そんな時、実家で行われた法要で、色とりどりの袈裟をまとったお坊さんたちがお経を唱えている様子を見て、袈裟の柄や色に「なんてきれいなんだ」と感動したのです。そうして芽生えた着物への興味。今は亡き祖母の着物を着て祖母の想いを感じ、そこから伊藤さんの人生がガラリと変わりました。「苦しかった心が雪解けを始めた」と語ります。

心地良さを追究して生まれる、唯一無二の美しさ

急速に着物へのめり込んでいった伊藤さんは、洋服を手放して、着物だけで生活する決断をします。流行り廃りのない着物を着ることで、「今あるものに心を委ね、それに没頭するマインドに変わっていった」とのこと。妊娠・出産時ももちろん着物姿。子育ても着物でしています。

着物教室を開く中で大切にしているのは、鏡を見ずに体の感覚で着ること。心地良い感覚に寄り添って着ると、そこには唯一無二の美しさが生まれるといいます。また、「着物の柄は時代を超えたラブレター」で、1つ1つの文様に意味があり、時代を超えて私たちはそれを受け取っているというのが、伊藤さんの考えです。そんな想いをのせ、独自のブランドを展開中。日本の美意識を感じる着物の魅力に、集まった参加者たちは心を奪われていました。

■クロストーク
それぞれのプレゼンの後は、4人の登壇者によるクロストークを実施。動画では見られない、トークの内容を少しだけご紹介します。

西村さんがそれぞれに「エネルギーの源は?」と尋ねます。これに対して、たんくんは「大学の研究室で学んでいた時も、芸能活動をしていた時も、今も、根底には“なぜ生きるのか”というテーマがあって、それが原動力です」と語りました。
石田さんは、「たんくんはプレゼンの中で実験によって“未知を既知化する”と言っていましたが、私は逆で“既知を未知化する”ことを目指しています。世界をどういう角度で見たら、違って見えるのかということです」と答えます。
さらに伊藤さんは、「変わらない美を追及したい、たくさん情報が流れている中で、古くから変わらないものを探したいという気持ち」と、自身の活動の源にある想いを語ります。
西村さん自身は、「いわゆる普通でないと言われる子とその親が誤解されているのを放っておけない。そういう人に出会うと、悔しくて何かしたいと思う」と、パワフルさの背景にある意志を話しました。

その他、さまざまなテーマで4人の話は盛り上がり、楽しく幕を閉じました。貴重なクロストークを全て聞くことができるのは、現地参加者だけの特権。ぜひ会場へ足を運んでください。

■参加者コメント
ここでいくつか、参加者の感想をご紹介します。

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◎以前から知っていて、参加してみたいと思っていました。タイミングが合ったので初参加です。皆さんの話がおもしろかったですが、特に石田さんの独自の研究が興味深かったですね。Hills Breakfastは非日常を手軽に味わえて、リフレッシュできるイベントだと思いました。普段この時間は通勤中ですが、それとはまったく違う有意義な1時間でした。
(40代・会社員)

◎よく参加している同僚に誘われて足を運びました。みなさんジャンルはバラバラなのに想いがあって、行動力があって、とても輝いていて、うらやましく思いました。西村さんの著書のことは知っていて、読んでみたいと思っていたところ。パワフルなプレゼンに力をもらいました。こんなに朝早くからたくさん人が集まっているのがすごいですね。
(40代・会社員)

◎5~6回目の参加です。自分の子どもが発達障害を抱えているので、西村先生の話を聞いてみたくて足を運びました。直接ご挨拶ができ、仕事として一緒にこれから何かできないかと話すこともできました。登壇者4人とも素晴らしく、普段は触れ合わないジャンルの皆さんの話を聞いて、非日常を感じました。たまにはこうして脳をリフレッシュするのはいいですね。
(50代・会社員)


11月はお休みで、次回は12月5日(木)朝8:00からの開催を予定しています。登壇者の情報や申し込みについては、こちらからご確認をお願いいたします。

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