140回目を迎えたHills Breakfastは、六本木ヒルズのヒルズカフェにて開催。約50名の参加者のうち半数ほどが初参加でしたが、冒頭の自己紹介タイムであっという間に場が和み、温かな雰囲気でスタートしました。
今回も個性豊かな4人の登壇者たちがそれぞれの想いを語りました。参加できなかった!という人は、各登壇者のページからアーカイブ動画をチェックしてくださいね。
■千葉 涼介(RIOSUKE CHIBA)/Visnu株式会社・ERAS株式会社 創業者
【profile】
1992年生まれ。岩手県出身。幼少期から街づくりや防災に興味を持つ。大学4年次にエンジニアとして独立したのち、2017年にIT教育事業のERAS株式会社、2020年に防災DX事業のVisnu株式会社を創業。
地元愛と被災経験が公務員への道を示した
2つの会社を創業して活躍している千葉さん。しかし、「起業したい」と思ったことはなく、公務員を目指していたのだそう。そもそも公務員になりたいと考えたのは、大きな地元愛と2011年の東日本大震災での被災経験がきっかけ。地元である岩手県北上市の魅力を多くの人に発信すること、まちづくりと防災に取り組むことを志したのです。
しかし、大学生の時に先輩に相談すると、「公務員には向いていない」と言われ、進路に迷いが生じます。どの道に進めばいいのかわからない状態のまま、大学3年生でバックパッカーとして旅に出ました。そこでの「何にも計画していなくてもなんとかなる」という経験が、ターニングポイントになったといいます。
目の前にある課題が事業を興すきっかけに
そうして、大学4年生の時にエンジニアとして独立。まちづくりや防災に貢献できる技術者を目指す中、エンジニア業界の課題を感じます。その解決のために創業したのが、1つめのIT教育事業会社。「プログラムが書けるだけでなく、何のためにその技術を生かすのかを考えられる人を育てる」のが事業の目的です。もう1つは、長く携わりたいと思っていた防災に関する事業を手掛ける会社。災害対応、避難の意思決定につながる情報を、AIを使って収集・発信しています。
自身の起業を振り返り、「創業者になったのは、自分がやりたいことを実現する最適な手段だったから」と語る千葉さん。課題感や目的意識から生まれた強い想いを原動力に、さらなる飛躍を目指します。
■小柴 優子(YUKO KOSHIBA)/フィランソロピー・アドバイザーズ株式会社 共同代表取締役
【profile】
日本GE、米国コロンビア大学 国際公共政策大学院卒業。大学院時代、Rockefeller Philanthropy Advisorsにてインターン、そして、ジョージ・ソロスの財団にて勤務。帰国後、日本財団と、関連財団の社会変革推進財団(SIIF)にてインパクト投資の推進を行う。日本人で初めて米国フィランソロピー・アドバイザー資格CAP©を取得。
寄付だけではない。多様化する社会貢献の形
耳慣れない「フィランソロピー」という言葉。小柴さんいわく、語源はギリシャ語で直訳すると「愛」と「人類」を意味するのだそう。日本語で言うと、「慈善活動」や「社会貢献」を指すといいます。小柴さんは、自身の資産を活用して社会貢献をしたい人へのアドバイザリー事業を行う会社を2023年に立ち上げました。
「社会貢献と言うと、寄付を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、社会貢献の形は年々変化し、多様化しています」と小柴さん。世界的に成功している企業のトップなどは、自身が興味のある社会課題の解決のために財団を設立し、資金提供のみならず政策提言、IT技術を用いた施策の実施などさまざまに活動しているそうです。
志のある人の社会貢献を、完全サポート
世界的に見て、日本には寄付文化が根付いていません。財団の設立数も急激に減少しています。その一方、日本でも成功した起業家がフィランソロピーに着手しているのが、最近のトレンド。節税目的ではなく、純粋に社会的なインパクトを目指し、自身の価値観を社会に反映しようとしているのが特徴だといいます。
しかし、こうした社会貢献を志す人の中には、「もっと満足のいく社会貢献がしたい」「財団の運営は大変そう」といった悩みを抱えている人も多いのだとか。その悩みを解決するために、小柴さんは会社を立ち上げたのです。「社会貢献活動をしたいと思った時に本気で始められるような社会」を目指し、挑戦は始まったばかりです。
■宇野 景太(KEITA UNO)/株式会社無茶苦茶 代表【profile】
“Respect and Go Beyond”をミッションに日本の総合芸術としての「茶の湯」をテクノロジーやストリートカルチャーなど様々な領域と掛け合わせながら日本の精神性を提起する機会や場をつくり出すアートプロデュース事業を展開。
日本の総合芸術「茶の湯」の可能性を広げる
宇野さんが代表を務める株式会社無茶苦茶。社名には、「茶の湯と作家の共創」をテーマに、「固定概念を打破するような無茶苦茶なことをする」、そして「作家に無茶苦茶してもらって日本文化の可能性を広げていく」という意味が込められています。
花、書、着物など日本文化が総合的に集まっている茶の湯。この貴重な伝統文化をライブパフォーマンス、ブランドとの商品・店舗開発、展示や空間演出といったアートに昇華し、日本文化の価値を上げる活動をしているのです。会社として大切にしている3つのキーワードは、ジャンルを和える「Remix」、すでにあるもの同士を組み合わせる「Engineering」、余白を大事にして見立てる「Focus」。この3つで伝統文化の可能性を広げます。
ユニークな発想で、日本文化を守破離する
ド派手なデコトラを背景にトラックの運転手とお茶会を開いたり、映像とリンクさせたエンタメ要素のあるお茶会を催したり。ストリートブランドとコラボして、スケボーの掛け軸を制作したり、愛媛県にあるホテルを貸し切って、窓から見える瀬戸内海を背景に空間全体を茶室に見立て、お茶会、生け花、書道のパフォーマンスをしたり。京都府立医科大学と協同で、日本文化を切り口としたアートセラピーに取り組むなど、医療の分野へも進出。
ユニークなアイデアを次々と形にして、これまでにない茶の湯のスタイルを生み出しています。「日本文化を守破離していきたい」。これからどんな茶の湯の新しい可能性が見られるのか、宇野さんの活動から目が離せません。
■大野 幸子(YUKIKO OHNO)/「自分の幸せ」案内人
【profile】
「いのち、芽吹く瞬間をつくる。」を理念として、人が自分を生きる喜びに感動する機会づくりがミッション。「挑戦者の(想いの)翻訳者」として、経営理念やビジョン等を70社策定。4年前より抽象画家としても活動し、感性と人生の軸を結びつける「アート合宿」を主催する。
多くの経営者と向き合って見つけた、幸せの定義
「自分の幸せを見つけるカギが、感覚や感性にあると思っています」と、冒頭に語った大野さん。そして、「幸せにはいろいろな定義がありますが、心からやりたいことをやっている状態なのではないか」と持論を述べます。そう考えるようになったのには、自身の仕事が影響しています。経営者に直接インタビューし、想いやこれまでの道のり、事業の目的などを聞いた上で、経営理念やビジョンをつくる仕事です。
これまで約70社の経営者と向き合い、さまざまな人生を見てきたからこそ、「幸せ=心からやりたいことをしている状態」という方程式を導き出せたのです。大野さん自身も、この「挑戦者の(想いの)翻訳者」の仕事を心からやりたい天職だと感じ、続けてきたといいます。
ありのままの自分を認められる絵画の世界
しかし4年前、より天職だと思える職業に出会います。それは画家。中学生以来、まったく絵など描いてこなかった大野さんですが、あるとき描いたものを見て、知人に「才能があるから、画家になるべき」と強く勧められたのだそう。そうして歩み始めた画家の道。絵はいわば自由な自己表現。「感動した」と言ってもらえることに「ありのままの自分が認められた感覚があった」と話します。
この経験を経て、「アート合宿」をスタート。泊りがけで絵を描いて自己解放する時間です。「これからの時代、“感覚”が幸せを見つける羅針盤になるのでは」と大野さん。GWには個展を開催予定とのこと。大野さんの作品に触れ、感覚を磨いてみてはいかがでしょう。個展の情報は大野さんのSNSをチェック!
■クロストーク
配信動画では見られない、登壇者4人のクロストークをちょっとだけ公開します。
会場から「お話を聞いて、みなさんそれぞれが感性を大事に生きていると感じました。感性に従って生きるために、普段からしないと決めていることは?」との質問が。
それに対して、大野さんは「“自分を大事にしない”という選択をしないようにしています。自分の感性の貯金を減らしたくない」と回答。また、宇野さんは「人に相談をしないと決めています。自分で全部決める。だいたい失敗するんですけどね」と笑います。そして「自分のアンテナが反応したことが大切。ダメだったら、次にシフトすればいい。失敗しても自分の責任だし、失敗から学ぶこともある」と自身の考えを教えてくれました。
小柴さんは「やりたくないことはやらない。昔は、誰かに認められるためだけにやることもありましたが、それをしていると、やりたいことをやる時間がなくなってしまいます」と限られた時間を大切に使う、自身のモットーを語ります。千葉さんは「自分の感じたことを、包み隠さない。全部さらけ出して、自分から相手に伝えると相手も心を開いてくれる」と経験をまじえて話してくれました。
登壇者に直接、質問ができるのがHills Breakfastのいいところ。ぜひ会場に足を運んで、気軽に手を挙げてみてください。
■参加者コメント
ここでいくつか、参加者の感想をご紹介します。
◎友人に誘われて始めて足を運びました。茶の湯とアートというクラシックとモダンを掛け合わせた宇野さんのお話がとても興味深かったです。Hills Breakfastは思っていたよりもフランクな雰囲気で、気楽に楽しめました。
(20代・大学生)
◎イベント自体に興味があって参加しました。4人の登壇者の個性豊かな話を聞いて、いろんな道、いろんな人生があるのだなとあらためて感じました。話を聞くだけでなく、参加者同士の交流もあり、楽しい時間でした。
(20代・大学生)
◎六本木ヒルズのライブラリーを利用する際、看板を目にしておもしろそうだなと思い、初めて参加しました。タイプの違う4人の話に大きなインスピレーションを受けました。朝早くからのイベントだし、登壇者も魅力的な人ばかりなので、運営されている皆さんの尽力を感じています。
(50代・会社役員)
◎上司に誘われて、10年ぶりくらいに足を運びました。私自身、何か地元のためにできることはないかと模索しているところだったので、地元に貢献するために起業した千葉さんの話が印象的でした。人の人生の芯に触れるような話が聞ける機会はなかなかありませんから、Hills Breakfastはとてもいい場だと思います。
(30代・会社員)
次回は、3月19日(火)朝8:00~。いつもと同じ六本木ヒルズ ヒルズカフェにて開催します。詳細、申し込みはこちらから。