六本木ヒルズ1階のヒルズカフェにて開催された、138回目のHills Breakfast。だんだんと朝の冷え込みが強くなり、早起きに辛さを感じ始めましたが、初参加も含めたたくさんの参加者が来場。時に笑いが起こり、時にグッと心を惹きつけられる真摯な登壇者のプレゼンに、熱心に耳を傾けていました。
参加できなかった!という人は、各登壇者のページからアーカイブ動画をチェックしてくださいね。
■大久保 信克(NOBUKATSU OKUBO)/株式会社笑い総研 代表取締役、一般社団法人Gibberish-Lab.代表理事、Laughter Yoga International認定 ラフターヨガマスタートレーナー
【profile】
18歳の時、「世の中をよくする鍵は笑いだ」と直感し、笑いの研究を開始。意味のない言葉を口に出す「ジブリッシュ」の第一人者としても活躍。TEDx登壇「一瞬で雑念を消し去る方法」。第11回全国講師オーディション最優秀グランプリ受賞。講座や講演、企業研修など精力的に活動。
「意味のないことに、意味がある」を提唱
冒頭でいきなり「まpあgyみゃぴゅ ざrrんぼppoび!」と呪文のような謎の言葉を放った大久保さん。ポカーンとする会場の参加者に、「でたらめなことを話しました」と種明かしをして笑いを誘います。これは、あえて意味のない言葉を口に出す「ジブリッシュ」と呼ばれる表現方法。笑いと深呼吸を組み合わせた健康法「ラフターヨガ」のマスタートレーナーでもある大久保さんが、今一番、力を入れているものだといいます。
しゃべっている間、何も考えられなくなるのがジブリッシュの特徴で、ストレスの多い現代社会において、一瞬で雑念を消し去る方法として注目されているそう。ジブリッシュの効果は「脳を休められる」「感情を吐き出せる」「コミュニケーションが広がる」の3点です。
意味から解放されれば、心が豊かになる
かの有名な喜劇王のチャップリンは、長く言葉を話さずジェスチャーだけでパフォーマンスをしていましたが、彼が初めて言葉を使ったパフォーマンスをした際に話したのも、ジブリッシュでした。「何のために意味なんか求めるんだ?人生は願望だ、意味じゃない」は、言葉に対するアンチテーゼを示したチャップリンの主張です。
とかく何にでも意味を求めがちな日々の中で、疲弊したり、争いごとが起きたりしていることは事実かもしれません。「ジブリッシュが世界共通語になれば、世界平和につながるのではないか」と大久保さん。再度に、「ジブリッシュをやってみたいと思った人?」と尋ねると、たくさんの手が上がりました。気になる方は、まず実践を!
■青木 健太(KENTA AOKI)/SALASUSU 代表理事
【profile】
2002年、大学在学中に友人とNPO法人かものはしプロジェクトを創業。子どもの人身売買撲滅に取り組む。09年以降カンボジアに移住し教育事業を担当。18年、同団体のカンボジア撤退に伴いSALASUSU設立、事業継続。22年、かものはしプロジェクト理事長兼任。
教育者を育て、カンボジアの教育を立て直す
普段はカンボジアのプノンペンに住んでいる青木さん。カンボジアでものづくりの工房をオープンし、ファッション雑貨の製造・販売などを手掛ける団体SALASUSU(サラスースー)を運営しています。近年は活動の幅を広げ、公立学校で学校の先生を育てる活動を中心に展開しているそうです。
そのきっかけは、「満月が怖い」というカンボジアの友人の言葉。ポル・ポト政権がカンボジアを支配していた頃、小学生だった彼は「満月を見ると、当時強制労働させられていたことを思い出す」と語ったといいます。多くの罪のない人々が殺され、そのなかには教育者も大勢いました。カンボジアの教育の立て直し、教育の質を上げていくこと。それが重要だと青木さんは考えたのです。
行動してみないと、自分を知ることはできない
「カンボジアに行って初めて、自分がやりたいことに気付いた」と青木さん。「人が元気に、前向きに生きている姿を見たい」。それが青木さんの原動力です。「夢や希望が見つからないと話す人は多いですが、まずは行動して、人や世界と出会ってみるしかないというのが実感です。動かないと自分を知ることができないとわかりました」。
そして、「NPOなどをやっていると、真面目な人だと思われがちだけれど、そんなことは全然ない」とも語ります。楽しいからやっている。楽しくなければ続かない。それが青木さんの率直な想いです。現在、来年カンボジアに学校を開くためのクラウドファンディングを実施中とのこと。一歩を踏み出してみたい人は、SALASUSUで検索を。
■荒木 麻衣(MAI ARAKI)/六本木ヒルズ オフィスワーカー/Toastmasters会員
【profile】
兵庫県神戸市出身。大学卒業後、米系ファッションブランド、独系自動車会社、米系金融機関にて営業コミュニケーションと顧客関係構築専門の研修講師を務める。プライベートでは2013年からトーストマスターズ会員。これまでにスピーチをした回数は500回以上。
文化の違いが、人前で話すことへの抵抗感を生んだ
実に朗らかで、余裕があり、聞く人の心に言葉がすっと入ってくる話しぶりの荒木さん。しかし「私もかつては人前に出ると足が震えていました」というから驚きです。荒木さんのスピーチ力は、トレーニングの賜物。そして、「人前で話す力を身に着けると、人生が変わっていく」とも語ります。
幼少期をアメリカで暮らし、自分が何を感じているのか、何をしたいのかをきちんと言えないとダメという文化の中で育った荒木さん。小5のとき日本へ帰国してカルチャーショックを受けたといいます。「これまでと同じように先生に質問したり、気持ちを伝えたりしただけなのに、クラスで浮いてしまいました」。それによって、人前で話すのが苦手になってしまったのです。
型を知り、場数を踏んで積み上げた自信が武器に
しかし、就職後に転機が訪れます。上司に人前で話す機会が多い部署への異動を勧められたのです。「絶対に無理!できない!」と思っていると、上司が教えてくれたのが、「トーストマスターズ」という団体でのトレーニングでした。そこはスピーチやプレゼン、リーダーシップのスキルを磨く国際的な組織。以来10年間、月3回のトレーニングを受け、現在に至ります。
「自信と恐怖はシーソーのような関係」と語る荒木さん。「スピーチの型を知ること、場数を増やすことで怖さは払拭でき、自信がつく」といいます。「目の前に3人いたら話せなかった私が、今は300人の前でも緊張せずに話せます」。引っ込み思案の性格は嘘のように変わり、友人が増え、もっと世界を広げたいと、さまざまな趣味も楽しんでいるそうです。話す場づくりのため、「東京ディスカッションプラス」というチームを運営し、毎月イベントを開催。スピーチ力を身に着けたいと思っている人は、チェックしてみては。
今回のプレゼンでも、トーストマスターズで学んだ人前で話す重要なテクニックを9個ほど実践しているそう。動画を見て、どんなテクニックが隠されているのか探ってみてくださいね。
■クロストーク
配信動画では見られない、3人の登壇者のクロストークをちょっとだけ公開します。
大久保さんがプレゼンの中で語った「たんぽぽにジブリッシュで話しかけたら、自然を深く味わえた」との話について、荒木さんが「詳しく聞きたい」と質問。
「普段、『たんぽぽ』という言葉のフィルターを通して見ているけれど、それがなくなって、そこにあるものをそのまま感じられる。たんぽぽと1つになる感じ」と大久保さん。「真剣に話すとおかしな人だと思われるかもしれないけど…」と苦笑しながら答えます。
それに対して、「なんとなくわかる気がします。最近、感情や身体感覚がすごく大切だと感じていて。頭で言い聞かせるのではなくて、体で感じて行動するのがベストだと思うけれど、そのときにどうしても言葉が邪魔をしてしまうんです」と青木さん。
荒木さんは、「余裕がないと新しいものを生み出せないけれど、余裕をつくるのはなかなかできない。ジブリッシュは、自分を切り替えるのにいい方法かもしれません」と賛同。大久保さんが提唱する、新たな表現手法は、登壇者の心をつかんだようです。
■参加者コメント
ここでいくつか、参加者の感想をご紹介します。
◎コロナ前はよく足を運んでいましたが、今回久しぶりに同僚を誘って来てみました。3人の登壇者に共通していたのは、楽しんで取り組んでいるということだなと感じました。
(60代・会社員)
◎同僚に誘ってもらって、初めて参加しました。バラエティに富んだ話を短時間で聞くことができて楽しかったです。「ジブリッシュ」は実践できそうだなと思いました。やってみます。
(50代・会社員)
◎私も以前トーストマスターズで活動していたことがあったので、荒木さんのお話を聞いてみたいと思い、参加しました。普段あまり関わることのないような分野で活躍する皆さんのお話を聞くことができて、とても刺激になりました。目当ての登壇者がいても、それ以外の人たちのお話も楽しめるのがいいですね。
(30代・自営業)
◎Hillsbreakfastが好きで、今日は4回目の参加です。いろいろなバックグラウンドを持つ人の話を聞きながら、自分もそれを疑似体験したような気持ちになれるのが、このイベントのいいところですね。荒木さんはスピーチのプロだけあって、座っている姿からすでに柔らかな雰囲気が出ていて、印象がとてもよく、さすがだなと感じました。
(30代・フリーランス)
2月のHillsbreakfastはお休み。次回は、1月25日(木)18時~、2023年11月24日にオープンしたばかりの麻布台ヒルズにて、新年会を兼ねた特別回として開催されます。
詳細と申し込みは、こちらから。